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ルールについて思わず考えてみた。

更新日:2024年11月20日

 最近のあまりにもルールを無視したような事態が世界規模で勃発しているのを目にしていると、私なりに改めてルールについて少し考えてみたくなりました。とはいえ結果的には自己確認のような文章になってしまいました。


 世の中には常にルールというものがあって、この当たり前のようなことを再認識しようとしても、時にはネガティブな規制部分だけが強調されてしまいがちです。それでも改めて見れば良い方向に作用しているルールも実は数多くあって、そのひとつを挙げるとすれば例えばスポーツにおけるルールがあります。このスポーツの世界でのルールの適用は特別に厳格なもので、なぜならそこでは制約のためのルールがあえてあることによってその制約を超越するファインプレーなどを見る者に顕現させることが目的となっているからです。これがルールによって創出される規制から解放へと超越する事例のひとつだと思われます。私は表現世界では基本的なところでこのような表出構造がどこかで必ず絡んでいるように思ってきました。

 さてその視点をアートの世界へと移してみれば、私が実践の場としている絵画の世界もやはり数多くのルールによって成立しています。そのルールでは、まずは視覚的表現世界であること、そしてその多くは平面上のものに描かれていて、そして最終的にはやはり描画による表現形式であることなど、これらが沈殿して制度化すればそれが世間に流布している絵画に対して一般的なルールのイメージとなるのではないでしょうか。(しかし最近はこうしたイメージから逸脱する絵画が一般的で、これまでの絵画観では捉えることができなくなっているのが現状なのですが。)そしてここで見えてくるのは、絵画の世界ではスポーツにおけるような厳格で揺るぎないルールとは違って緩やかなものとして存在しているということです。しかし、規制としてのルールがなければ表現物は明確に顕在化することができないとする立場がスポーツと同じであるのなら、アートのルールもスポーツのようになぜもっと厳格なものになっていないのかという素朴な疑問に至ります。実はここにアートの本質のようなものがあるように私は思うのです。

 本質的に自由を求めるのがアートであると考えるなら(私がそうです。)、たとえその場だけのルールであっても最終的に自由を阻害するものとして働くのであれば非常に困ります。そのルールが必要とされるときはそこには必ずアーティストの承諾が前提でなくてはならないはずで、それが不可能な場合は新たに創作してでも納得する新ルールになっていなければなりません。アートにおけるルールとは他から与えられるものではなく自らが設定してその全責任を負うという考え方が基本なのだろうと思います。ですからルール設定の段階から創作のプロセスは始まっていることになるわけで、そしてそこでのルールは表現世界の一部分として積極的に組み込まれて、ルールと表現は必然を伴った一体感の中に存在していなければならないということになります。それがうまくいっていない場合はいくら斬新に見えるルールといえどもその存在価値は評価されません。かつてはルールの新しさだけを提示するだけで表現として評価された時代もありましたが、今では「ルール」と「表現されるもの」との関係が必然に近い濃密なものを求める時代になりました。単なる目先の新しさだけではなく、その「改新の質」が常に問われているということなのだと思います。

 さて、スポーツのルールにおいては絶対的に規制することで世界を既定することが目的ですから、プレイヤーはここでは絶対服従を求められます(ルールを改変することなど絶対的に許されていません)。ここがアートとスポーツとの違いです。アートの世界ではこのような固定したルール観ではあまりにも不自由すぎるのです。

 それでもアートにはやはりルールはいつもついて回ります。これは何もアートだけのことではなく人間である限り社会の中ではルールというものから無縁で生きていくわけにはいかない原則のようなものですから。そうであるならばそうしたルールを維持したままで、「制約」を乗り越えるための「自由」に向かうための素材として積極活用しよう思うのは自然な考えの流れのように私には思えます。

 こうしたルールに対する考えを「社会の中での制度」という大きなものに延長して考えてみても、基本構造に変質は起きません。ということになってくると、アートという場所がたとえ社会制度としてひとつの分野であるかのようでも、きっとその枠を超越しようとして(それでもその枠をどこかで維持しながら)しかしその枠に依存しないで自らの新たな枠を設定しようとするかもしれません。いつになってもアートは外から与えられる形でなくても自らの力でその制作の場所をやはり見出していくでしょうし、たとえルールによって制約されているように見えても、どこまでも自分自身を自由の場に置きたいと考え続けていくのだと思うのです。よく言われてきた「型から入ってその型を出る」という言葉の真意はこのあたりにあるのでしょうか。



 
 
 

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